「未見坂」 堀江敏幸

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架空の地方都市に生きる人々のちょっとした話。短編集です。
どの話もドラマチックな展開があるわけではなく、淡々としているのですが、
登場人物の描写が丁寧で、短い話なのに、あたかも自分もその場に住んでいて、
いろんな人の話を聞いたり、知っていたりするような錯覚をおぼえます。

主人公が「さん」付けになっているのがおもしろいです。
床屋でお客さんの話を聞いたり、髪を切ったりしながら、いろんなことに思いをはせたり、
ある話をきっかけに、自分が昔ボンネットバスで移動スーパーを営んでいたことを
ぼんやりと考える・・・
日々の生活の中で、人々はいろんなことを考えながら、それでも今を生きている。
そんな感じがとてもよく伝わってきます。

他にも、子どもの視点で、周りにいる人を感受性豊かに観察している描写がいいです。
子どものころって、男の人のタバコの吸い方や、体から発するにおいや、言葉、
女の人の声やしぐさなんかをすごく気にしていたことを思い出しました。
そこから、その人の「人となり」「生きざま」のようなものを感じ取っていた気がします。

今は自分が大人になっているけれど、子どもたちから自分たちはどんな風にうつって
いるんだろう?現代でも子どもたちは昔と同じように他人というものが気になるのかな。
そんな風にいろんなことを考えてしまいました。
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by arinko-mama | 2009-01-27 12:50 | 読書