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「ひそやかな花園」 角田光代

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毎日新聞日曜くらぶに連載されていた作品です。(20094月から一年間)
小さい頃、家族と一緒に年一度だけ訪れていた別荘のような場所。
そこには同じように小さい子供たちを連れた何組かの家族が集まり、
大人たちはお酒を飲んでバーベキューをし、子供たちは一緒に遊んだ。

しかし、ある年を境にその場所に行かなくなった。
両親に聞いてもそのことには触れたくないようだった。
そんな過去をもった子供たちがやがて20代後半ぐらいになり、
再び集まり始める。自分たちの過去を知るために・・・

自分の過去を探っていくという設定はよくありますが、
それが複数で、しかも共通の過去を持っていて、結婚や出産を迎える
年齢であるということがこの作品の秀逸なところです。

子供を育てる頃の年齢になると、その頃の両親の気持ちが分かるようになり、
そして、両親が自分に対してどう接してくれていたか、思い出します。
ネタばれになってしまうのでここでは書きにくいですが、
家族とはなにか、生きていくこととは何か、幸せとは何か。
いろんな登場人物のいろんなセリフ、一つ一つに重みがあって、
よく書き分けられているなあ。と思いました。

賢人が咲に温かい言葉をかけてもらうシーンが好きです。
初めて自分の気持ちを静かに手を握って聞いてもらえたことで、
賢人が涙を流します。こんな風に自分の気持ちを分かってもらえる
人が近くにいるということが、幸せなんだと思いました。

by arinko-mama | 2011-05-16 12:54 | 読書