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「ムーン・パレス」 ポール・オースター

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それは人類がはじめて月を歩いた夏だった。
スタートからいいですね~。雰囲気があって。柴田元幸さん。
私は前半のビクター伯父さんが所有していた千冊以上の本が入った
七十六の箱をフォッグが「虚構の家具」にして住み、おじさんが亡くなってから
それを順番にあけていって読むところが好きです。

伯父さんと同じ言葉を読んで、同じ物語を生きて、ひょっとしたら同じことを
考えているんだ、そう思うと気持ちが慰められた。
という文章がとてもいい。
亡くなった人が読んでいた本を読むことで死を悼むというスタイル。
すごく知的で、ロマンティックで・・・

人生を放棄しはじめたころのある日、なんとなく映画館に入ると、
昔、伯父さんとみた「「八十日間世界一周」がはじまる。
運命はちゃんと僕のことを見守ってくれているんだ、と思い、
不可解な、説明のつかない涙が瞼の裏にこみ上げてきた。
というシーンも素晴らしい。

そういう偶然の出来事や、友人の助けなど、人生で辛く悲しいときには
何か救いのような奇跡が起こること。そういうのってありますね。
フォッグが過ごした日々、感じたことがきれいな文章で綴られていて、
また時々読み返したくなるような一冊でした!  

by arinko-mama | 2010-09-03 11:57 | 読書