「岸辺の旅」 湯本香樹実

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「夏の庭」「ポプラの秋」「春のオルガン」など、
子どもの視点で描かれた、湯本さんの作品が好きです。
今回の久々の新作は、大人の世界でした。

失踪したと思っていた夫が、ある日突然家に戻ってくる。
でも、実際には自分は病気で(うつ病のよう)亡くなっている。と語り、
その後二人は夫が亡くなってから訪れた場所を旅していく・・・

亡くなった後、生前は語り合えなかったことを話したり、知らなかったことを
確認したりすることは実際できないけれど、この夫婦はそれを旅しながら話す。
でもなぜ亡くなったのか、深く問い詰めることもしないし、いたって穏やか。
それは時間が経ったせいなのか、もう亡くなってしまっているからなのか、
それとも、やはり二人の間には少し距離があったのか・・・

漂うような死者と生者との交わりを、静かに美しい文体で描いていて、
不思議な夢をみているような感覚でした。
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by arinko-mama | 2010-03-16 22:34 | 読書